阿修羅の手

阿修羅の手

この記事は2015年3月に書いた記事です。最近、脳出血を起こして間もない当事者の方や、その御家族と思われる方が私のブログを見に来られているようなので、過去の記事ですが脳卒中を起こして間もない頃の私の体験談のような記事を再掲させて頂きました。奇しくも脳卒中に見舞われてしまった方やその御家族の方も、前向きな姿勢で麻痺と取り組めば、必ず回復・社会復帰の道が開けると思います。

以下はそんな私の不思議な体験談です。今でもこの右手はこの頃と同じ状態ですが、薄皮をはぐように少しづつ、自分のものに取り戻しつつあります。

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約3年前、僕が脳出血を起こし救急で運ばれて、気が付いてからこの身に起こった2週間程の不思議な体験の話をします。

病院のベッドで1週間経ち、意識がはっきりとしてきた時から寝たきりの状態から意思を少しづつ伝え始めました。

呂律が回らないので身振り手振りを交えながら。

元々喋るときにはジェスチャーをよく使って喋るほうでしたが、この時自分の中では右手は動いていました。

今の話、聞かれて驚かれたと思います。

それもその筈、自分では動かない手とは別の「手」が存在していました。脳の中に。

これは通事故などで片腕を切断した患者さんの中に失った腕の感覚が長い間残っているケースがかなりあります。

「まぼろしの手」や「幻肢」と呼ばれているそうです。

切断こそはしていないものの、それを動かす指令を出す脳やその回路が損傷しているので、結果「幻肢」が出現した様になっていました。鋭い痛みと痺れを伴う右肩の部位から、ピタッと反応もせずに布団の上に横たわったままの腕とは別に、阿修羅像の腕の様ににょろにょろっと生えてた私の「右手」。

右に左に欲しいものや、やりたい事を右手は指差しで伝えます。

でも実際はイメージだけが動いていたんですけどね…

存在しないのにあたかもそこにあるかのように感じる、部位を切断した場合の現象が、私の脳疾患でもリアルに感じました。

その状態は冒頭でお話した通り2週間続き、ある日突然発現しなくなりました。

そして阿修羅の手は動かない本当の手に吸い込まれる様に同化しました。言うなれば幽体離脱から目覚める様に…

因にこの話をセラピストに話すと「阿修羅の手」と呼んだことから、そのように名付けました。

それは脳疾患患者が麻痺して動かない部位に起こる「学習性不使用」から、「阿修羅の手」が消えた訳ではなく、その時から廃具だったところから上腕はなんとか挙げれる様になり、振り子を動かす様な大きな動作は出来るようになりました。

この病気が未だ解明されてないのは、こういう患者の体験談や問診による症状の言い表し方がまともに出来ていないせいで、臨床体験を書いた書物が数多くないのも事実です。

人によって様々に分かれる脳の病気ですが、私が体験した脳卒中(大雑把に脳卒中と書きます)は、この様な経緯を通りました。

これを読んで頂いてるうちに「ミラーセラピー」や様々な脳の不思議が頭を過った方もいると思いますが、脳疾患の当事者(被験者.患者)にこそこの様なあなたが体験した「脳の不思議」を語って欲しいと、先ず我先にと書いてみました。

脳疾患患者が1000人いると1000通りの障害のパターンがあると思われる、神への最後の領域『脳』ですが、あなたはどのように捉えて体験したのか?興味は尽かない今日この頃です…。

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