【神戸フレンチ黄金期──あの頃、味わった“時間”】

【神戸フレンチ黄金期──あの頃、味わった“時間”】

【神戸フレンチ黄金期──あの頃、味わった“時間”】

1980年代から90年代にかけて、神戸はフレンチ・ブームがありました。
異国情緒と港町の洗練が溶け合う街に、「食を文化として楽しむ」風が吹いていた時代です。

その象徴が、ポートピアホテルの「アラン・シャペル」。
言わずと知れた、フランス・ミヨネ村に本店を構えた伝説の三つ星シェフ、
アラン・シャペル本人の名を冠した唯一の海外店でした。
彼の哲学は“シンプルでありながら、深く、そして誠実な料理”。
その精神が神戸にも息づき、国内外の食通たちが訪れる特別な場所となりました。
そこに漂っていたのは、ただの高級感ではなく、料理を通して「人生を豊かにする時間」でした。

そして、ポートアイランドのワールドビル高層階にあった「V & V」。
大きな窓から広がる神戸の街並みと港の光。
そこには“神戸らしい都会のロマン”がありました。
少し背伸びをして予約を入れ、夜景を眺めながらワインを傾ける。
若い頃の私にとって、それは小さな夢であり、大人への階段でもありました。

北野町にも、いくつものフレンチが軒を連ねていました。
坂道の途中にひっそりと佇むレストラン。
名前は思い出せませんが、重厚な扉の向こうで流れていたピアノと、
皿に添えられた季節の彩りが、今でも心に残っています。

先日、映画「グランメゾン・パリ」を観て、そんな記憶が鮮やかに甦りました。
料理人の情熱、一皿に込められた信念。
あれはまさに、かつての神戸にも確かにあった“魂の味”そのものでした。

あの時代の神戸は、食を通して生き方を学ばせてくれた街。
フレンチとは、ただの料理ではなく、“心に残る時間”を届けてくれるもの。
今もその香りを思い出すたび、神戸という街の豊かさを感じずにはいられません。

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画像はポートピアホテルにあった「アラン・シャペル」です。