完成図面のない建築──サグラダ・ファミリアはなぜ建ち続けているのか

完成図面のない建築──サグラダ・ファミリアはなぜ建ち続けているのか

今、世界中が注目している、**アントニ・ガウディ**の作品群のひとつとして、
1984年にユネスコの世界遺産に登録されている サグラダ・ファミリア
FacebookなどのSNSでも、興味を持たれている方は多いのではないでしょうか。

最近では
「来年、サグラダ・ファミリアの一部が完成する」
というニュースもよく目にします。

ですが、そこで私は、ひとつの素朴な疑問を持ちました。

そもそもサグラダ・ファミリアには、“完成図面”というものが存在するのだろうか?
最初から完成形が定められていない建築を、私たちは「完成する」と言っていいのだろうか、と。

この疑問をきっかけに調べてみると、
サグラダ・ファミリアという建築は、私たちが思っている以上に特異で、思想的な存在だということが見えてきました。


目次

  1. ガウディは完成図面を残していたのか

  2. なぜ図面なしで建築が進められたのか

  3. 現在のサグラダ・ファミリアは「誰の建築」なのか

  4. 「2026年完成」という言葉の本当の意味

  5. 図面がなくても建築は成立するのか

  6. おわりに──完成とは何か


1. ガウディは完成図面を残していたのか

結論から言うと、
ガウディが描いた「サグラダ・ファミリア全体の完成図面」は存在しません。

正確には、

  • 部分的な平面図

  • 装飾や構造のスケッチ

  • 立体的な石膏模型

といった資料は残されていましたが、
「この姿が最終完成形です」と示す一枚の完成図は、最初から用意されていなかったのです。

さらに1936年のスペイン内戦によって、
ガウディ没後に残されていた多くの模型や図面が破壊・焼失してしまいました。


2. なぜ図面なしで建築が進められたのか

その理由は、ガウディの建築思想そのものにあります。

ガウディは、一般的な建築家のように
詳細な設計図を描き、それを現場に渡す、という方法をあまり取りませんでした。

彼が重視していたのは、

  • 自然界の法則(曲線、重力、幾何学)

  • 逆さ吊り模型などによる構造実験

  • 図面よりも、模型によって形を探るプロセス

つまりガウディの建築は、
完成形を固定せず、思想と原理を後世に託す建築
だったと言えるのです。


3. 現在のサグラダ・ファミリアは「誰の建築」なのか

現在も建設が続いているサグラダ・ファミリアは、
ガウディのスケッチ、写真、模型の断片、そして残された言葉をもとに、
現代の建築家たちが解釈を重ねながら造り続けています。

CADや3Dモデリングなどの最新技術を使いながら、

「これは、ガウディならどう考えただろうか?」

という問いを何度も繰り返し、形にしているそうです。

ある意味でこれは、
ガウディ一人の建築ではなく、時代を超えた共同制作
なのかもしれません。


4. 「2026年完成」という言葉の本当の意味

よく耳にする「2026年完成」という言葉は、
中心となる象徴的な塔(キリストの塔)が完成する、という意味合いが強いものです。

建築全体としては、
2030年代前半まで工事が続くと見込まれています。

しかし、そもそも完成図面が存在しない建築において、
「完成」とは何を指すのでしょうか。

私は、こうも感じました。

サグラダ・ファミリアは
「完成する建築」ではなく
「完成に向かい続ける思想」なのではないか。


5. 図面がなくても建築は成立するのか

通常であれば、これはあり得ない話です。
しかしサグラダ・ファミリアは、140年以上にわたって、実際に建ち続けています。

それは、

  • 揺るぎない建築思想

  • 自然法則に基づいた構造

  • 後世に委ねることを前提にした設計観

これらが揃っていたからこそ、可能だったのだと思います。


6. おわりに──完成とは何か

完成図面がない。
完成時期も曖昧。
それでも人々は手を止めず、考え続け、造り続けている。

サグラダ・ファミリアは、
「建築とは何か」「完成とは何か」
そんな根源的な問いを、今も私たちに投げかけている存在なのかもしれません。